Mark Hara's Blog

よりよい日本・よりよい世界を考える

「キリストは復活した」とはどういうことか?

 「キリストは復活した」とはどういうことでしょうか?「サンタクロースなどいない」という考え方から言えば、「死んだ人が復活することはあり得ない。嘘に決まっている。そんなありもしないことを信じている人は阿呆である」でおしまいです。もう少し詳しく考えると、死んだ人が蘇生したとしても、遅かれ早かれ寿命を迎えて、最終的には死ななければならないでしょう。ですから、キリスト教の教義上は、「神の子が天から降ってきて、様々な奇跡を行ない、死んで復活して、天に帰っていった」ということになっています。E. T. という映画をご覧になったことがありますか?あの物語の構造はキリスト伝そのものでした。E. T. が天から降ってきて、様々な奇跡を行ない、死んで復活して、天に帰っていきました。

 聖書の原著者による直筆の原稿は残っていません。様々な写本が残っているだけです。写本というものは、微妙な違いがあるもので、内容が完全に一致するものではありません。それで、様々な写本を比較検討して、原著者による本文を推定する作業が必要となります。そのような作業を経て推定された本文を翻訳したものが、現在の聖書です。知られていなかった写本の発見や写本の評価の変化等によって、推定される本文が変わることもあります。そういう意味でも、聖書を絶対視することは、学問的にはおかしなことです。

 イエスが十字架で死んだのは西暦30年ごろであると考えられています。新約聖書の文書中で最も古いとされるパウロの手紙は50年代に書かれたと考えられていますが、すでに復活信仰が成立しています。福音書については、マルコによる福音書が70年代、マタイによる福音書ルカによる福音書が80年代、ヨハネによる福音書が90年代の成立と考えられています。4つの福音書にはそれぞれ復活物語が含まれていますが、墓が空であったという点以外は、微妙に違っています。

 イエスが処刑されたのは、福音書によると、当時のユダヤ教の権力者に危険人物と見なされたからでした。イエスは、福音書によると、大工または大工の子で、庶民でした。ユダヤ教の学校で勉強したわけではありませんでした。宗教者としては無資格者だったわけです。しかし、彼の教えや奇跡や人柄に多くの人たちがひきつけられ、社会現象になりました。

 権力者が都合の悪い人を殺すということは、歴史上、たびたび行なわれてきました。イエスは殺されましたが、彼が始めた共同体は、そのことで終わらず、現在も続いています。ローマ帝国の国教になってからは、キリスト教が権力になってしまったという歴史はありますが。権力者が都合の悪い人を殺すことは、たびたび起こることですが、そのことによってある思想をなきものにすることは、できないことが多いのではないでしょうか。イエスが始めた運動は、その後、権力になってしまったとはいえ、今でもキリスト教として続いています。彼が始めた共同体は、彼の死によって終わらず、今も続いています。これを復活と見ることもできると思います。