Mark Hara's Blog

よりよい日本・よりよい世界を考える

教育の目的とは?

 教育の目的について、日本の教育基本法は、次のように述べています。

第1条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 ここで言っている「人格の完成」とは、「その人がその人になる」という意味なのです。なぜそうだと言えるのかは、後で説明します。

 ちなみに、日本の現在の教育基本法は、第一次安倍内閣の時、2006年に全部改正されました。教育基本法の全部改正は、神道政治連盟の戦後の悲願の一つだったのですが、その件については、ここでは説明しません。旧教育基本法は、日本国憲法施行の直前、1947年に公布施行されたものです。旧法の第1条は、次のように述べています。

第1条(教育の目的)
  教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 旧法にも「人格の完成」という文言がありました。一方、旧法にあった「個人の価値」や「自主的精神」の文言は、現行法では削除されています。これは改善でしょうか、改悪でしょうか?どう思われますか?

 教育の目的については、世界人権宣言(1948年採択)も次のように述べています。

第26条
1 (省略)
2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。
3 (省略)

 ここでは「人格の完全な発展」という言葉になっています。この部分は、世界人権宣言の英語版では次のようになっています。

Education shall be directed to the full development of the human personality and to the strengthening of respect for human rights and fundamental freedoms. It shall promote understanding, tolerance and friendship among all nations, racial or religious groups, and shall further the activities of the United Nations for the maintenance of peace.

 「人格の完全な発展」と訳されている部分は、"the full development of the human personality" となっていますね。つまり、教育の目的は「その人が完全にその人になること」でなければならないと述べているわけです。

 このような教育観の正反対にあるのが、徴兵制であり、徴兵制下における軍事教練でしょう。軍隊においては、個性は邪魔であり、どこまでも命令に従う人、いわば兵器の一部、機械のような人が望ましいわけです。このような環境は、理性と良心という人間の本性、すなわち自然法に反しているので、軍隊から生還した人が精神を病む率は高く、せっかく生還したのに自死してしまう人が少なくないのです。

 徴兵制下における軍事教練や実際の戦闘は一つの極端な場合ですが、「企業戦士」の場合はどうでしょうか?あるいは「受験戦争」の場合は?方向性としては似た現実があるのではないでしょうか?そういう視点で日本の新旧の教育基本法を見るとき、2006年の全部改正は改善だったのか改悪だったのか?あなたはどう思われますか?