Mark Hara's Blog

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右翼政権が成立するための条件とは?

 大西広さんという史的唯物論の立場に立つ経済学者のことを慶大生の知人に教えてもらいました。大西さんは、慶大に行かれる前は京大におられました。大西さんは、下記のところで、右翼と左翼をわかりやすく定義しています。一読されることをおすすめします。

https://www.kyoto-u.com/?page_id=383

 この京大のサイトがいつまでもあるとよいのですが、それは私にはわかりませんので、私なりに大西さんの右翼・左翼の定義をまとめておきます。大西さんは、左翼とは社会的弱者の立場に立つ人たちのことであり、右翼とは社会的強者の立場に立つ人たちのことである、と定義しています。大西さんは、史的唯物論の立場から、左翼も右翼も存在意義があるから存在している、と言っています。社会的弱者に配慮する政策が必要なことは理解しやすいですが、社会的強者に配慮する政策はどのような場合にどのような意味で必要なのでしょうか。例えば、それまでになかった新しい社会資本や市場が出現したような場合、弱者にとっては収入が激減することもあり得ます。道路や橋ができ、自動車が普及し、大型店舗ができたような場合を考えてみてください。弱者に配慮する政策は常に必要ですが、ときには強者に配慮する政策があってこそ、社会が発展するという面もあるということです。明快な右翼・左翼の定義ではないでしょうか。

 この右翼・左翼の定義を前提として考えた場合、強者と弱者では、弱者のほうが多いでしょう。資本家と労働者では、労働者のほうが多いし、生産者と消費者では、消費者のほうが多いでしょう。民主主義社会においては、選挙によって法律や条例を作る代表者が選ばれます。有権者が自分に配慮する政策を掲げる候補者に投票した場合、必ず左翼政権ができることになるのではないでしょうか。しかし、現実には、右翼政権ができています。なぜそういうことが起こるのでしょうか。極端に言えば、牛が肉屋を支持する状態ができなければ、右翼政権は成立しないのではないかと思われます。

 自分が損をしてでも社会の発展を優先する人が多数を占めるということがあるでしょうか。アメリカの前政権や日本の現政権は、右翼か左翼かという意味では右翼政権でしょう。ヒトラーは、選挙で多数の支持を得て政権を掌握し、議会で多数の支持を得て全権委任法という法律を成立させて、全権を掌握する独裁者になりました。右翼政治家は、自分こそが愛国者であり、左翼政治家は売国奴であるというレトリックを用います。右翼政治家は、内容が曖昧な国家のイメージを強調し、多数の国民を熱狂状態に陥らせ、内容が曖昧な誇りを持たせます。その際、印象操作や嘘という手法が使われます。しかし、右翼政権が、国家に発展や繁栄や幸福をもたらさず、破局や混乱や衰退をもたらした場合、有権者たちは目が覚めて、右翼政治家を支持することをやめる、ということが起こると考えられます。

 弱者への配慮は常に必要ですが、社会の発展のためには強者への配慮も必要です。また、利害を調整して共通善(common good)を実現することが政治ですが、それが容易ではないことは明らかです。しかし、曖昧なイメージや虚偽がもたらす感情ではなく、事実と理性に基づいて判断する人が増えることが、よりよい社会の実現につながるはずです。そのような意味でも、大西さんの右翼・左翼の定義は非常に助けになるものだと思われます。