Mark Hara's Blog

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神学部を卒業しても大卒になるのはなぜか?

憲法第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 日本国憲法には上のような条文があります。しかし、宗教系の私立学校への公的な補助は行なわれています。なぜそれが可能なのでしょうか?学校法人は宗教法人ではありません。また、学校法人が設置している大学・短大・高専に対しては、文部科学大臣が認可を与えて、監督していますし、幼・小・中・高に対しては、都道府県知事が認可を与えて、監督しています。

 また、日本国憲法には、下のような条文もあります。

憲法第26条

すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

 私立学校への公的な補助には、国民の教育を受ける権利をできるだけ実質的なものにする目的があると思われます。

 もう一つ留意すべき点として、キリスト教神学に関しては、19世紀のドイツで近代神学が成立し、それが世界中に波及したということがあります。すなわち、それまでは、神学は神についての思弁の学でしたが、近代神学の成立以降は、神についての人間の思想や文化を研究する学問となりました。すなわち、近代神学は、実在する文献を研究する人文学の一分野となったわけです。そのようなわけで、世界の名門大学には神学部があることが多いわけですが、神学部を卒業しても大卒となります。日本では、同志社大学関西学院大学上智大学などに神学部があり、そこを卒業すれば、文学部を卒業したのと同様に、大卒となります。また、他の宗教の学問についても、キリスト教神学と同様に近代化されたので、大学で仏教学や神道学を専攻しても、卒業すれば大卒となります。

 要するに、現代においては、神学とは、神を論じる学問ではなく、人間の宗教思想や宗教文化を研究する人間学である、と言えます。

参考:日本国憲法の誕生(国立国会図書館)