Mark Hara's Blog

よりよい日本・よりよい世界を考える

なぜ日本は夫婦別姓を選択できない世界で唯一の国なのか?

 日本は夫婦別姓を選択できない世界で唯一の国です。なぜそんなことになっているのでしょうか?それは、女子差別撤廃条約の締約国が189か国に及んでいて、この条約が選択的夫婦別姓を要求しているからです。日本はこの条約を1985年に締結しましたが、一部不履行の状態が続いています。憲法第98条2は締結した条約の遵守を求めています。

憲法第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

ですから、現状は違憲状態でもあります。日本で選択的夫婦別姓に反対している団体は、神社本庁自民党神道政治連盟です。以上の事実は、主権者である国民が選挙の際にどの党の誰に投票するかを考える上で非常に重要な意味を持つ情報であると思われますが、どういうわけかマスコミ各社が一切言及しないだけでなく、マスコミ各社に登場する専門家たちも触れていません。なぜなのか私にはわかりません。

 女子差別撤廃条約の第16条1の (g) が選択的夫婦別姓を要求しています。

女子差別撤廃条約第16条
1. 締約国は,婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし,特に,男女の平等を基礎として次のことを確保する。
(a)~(f) (省略)
(g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
(h) (省略)
2. 児童の婚約及び婚姻は,法的効果を有しないものとし,また,婚姻最低年齢を定め及び公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置(立法を含む。)がとられなければならない。

 ちなみに、上記の女子差別撤廃条約第16条2についても、日本では女性だけ16歳と17歳の児童が合法的に結婚できることになっていて、条約違反の状態にありますが、この問題は、2022年4月から、成人年齢が18歳に変更されることに伴って、合法的に結婚できる年齢も男女共に18歳からに変更されますので、この条約違反は解消されることが決まっています。この条約違反を解消するのに、条約締結から実に37年を要したことになります。(子どもの権利条約が言う児童とは18歳未満の人のことです。)

 夫婦の氏(姓)に関する日本の民法の規定は民法第750条にあります。

民法第750条
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

日本の裁判所の判例では、民法第750条は男女平等であり、合憲であるとされています。

 しかし、国連の女子差別撤廃委員会は、日本の民法第750条は夫婦同姓を強制するもので、条約違反であると見なし、日本政府に対して条約不履行であることを再三指摘しています。この問題に関する国連と日本政府とのやり取りについては、内閣府男女共同参画局のサイトに関係文書が掲載されています。掲載されている関係文書を一つ一つ閲覧するには、かなりの労力と時間が必要ですが。日本政府は、日本の裁判所のように、民法第750条は男女平等であり、条約違反ではない、という反論はしていません。選択的夫婦別姓が実現していないことの言い訳を再三述べています。つまり、条約不履行の状態にあることを政府は認めています。このことは非常に重要な情報であると思われますが、どういうわけかマスコミ各社は一切触れませんし、マスコミ各社に登場する専門家たちも言及していません。しかし、関係資料は公開されています。時間と労力をかければ、閲覧して、確認できます。