Mark Hara's Blog

よりよい日本・よりよい世界を考える

日本語で英語の発音を説明することは可能か?

 Bat は「コウモリ」または野球の「バット」、but は「しかし」ですね。誰もが知っている単語だと思いますが、これらの単語を区別して言うことができますか。また、人がどちらかの単語を言った場合、どちらの単語を言ったのかわかりますか。Bat は [bæt], but は [bʌt] ですね。さて、これらの母音を日本語で説明できるかどうか、やってみます。

 口の力を抜くと、重力であごが下がって、口が半開きになるでしょう。その状態で声を出してみてください。その音が、だいたい [ə] の音です。その音を強いてカタカナで表記すれば、アになるのではないでしょうか。また、口の力を抜いて、口を半開きにしたときの唇の位置を意識してください。前歯より当然少し前に唇が出ているでしょう。

 さて、そこから、口の形を変えて、日本語のオの音を出してください。唇の開き方は半開きのときよりも小さくなり、唇は半開きのときよりもさらに前に出るはずです。

 さて、再び、唇を半開きの状態に戻し、そこから、口の形を変えて、日本語のアの音を出してください。今度は、唇の開き方は半開きのときよりも大きくなり、唇は横に引っ張られ、前歯に引き寄せられるはずです。

 人間の唇は、半開きよりも横には開かないで力を入れた場合、前に突き出ます。半開きよりも横に開いた場合は、横に引っ張られ、前歯に引き寄せられます。日本語のアの音は、唇を横に開かないと出ません。唇を横に開くと、横に引っ張られ、前歯に引き寄せられます。

 さて、英語の場合、[ə] の音を基準に考えると、[æ] の音を出すときは、唇が横に開きますから、唇は前歯に引き寄せられます。ところが、[ʌ] の音を出すときは、唇は [ə] の音より横にも縦にも開きません。ただ力が入るだけです。そうすると、唇は少しだけ前に出ます。日本語のアの音も、英語の [æ] の音も、唇が横に開くので、唇は横に引っ張られ、前歯に引き寄せられますが、英語の [ʌ] の音は、唇が横に開かないので、唇は少しだけ前に出ます。つまり、日本語のアと英語の [ʌ] とでは、唇が前歯に引き寄せられるのか、少しだけ前に出るのか、という違いがあり、全く違う音だということになります。

 Love という言葉は歌の中でしばしば出てきますが、発音は [lʌv] ですので、母音は [ʌ] の音で、唇が横に引っ張られたり、前歯に引き寄せられたりすることはなく、むしろ、少しだけ前に出ます。日本人で love を正しく発音できる人は非常に少ないです。

 Amazing Grace という有名な讃美歌がありますね。最初の歌詞は次のようになっています。

Amazing grace

How sweet the sound

That saved a wretch like me

上の下線を付けた3か所に [ə] の音が出てきます。この音はアではありません。唇が横に引っ張られて、前歯に引き寄せられる音ではありません。唇は、横には引っ張られず、少しだけ前に出ます。YouTubeAmazing Grace - Pentatonix を検索してみてください。また、Elvis Presley Love Me Tender を検索してみてください。

 アの音を出すときは、唇が横に引っ張られて、唇が前歯に引き寄せられます。 [ə] や [ʌ] の音を出すときは、唇が横に開かないので、唇が「余り」、少しだけ前に出ます。